理想のスプリント・キック動作

なかなか言葉だけで説明するのは難しいが、過去のデータから類推するに以下のようになる。

・振り戻しが始まって,接地寸前から接地瞬間くらいまでにものすごい速さで脚を動かして身体を加速させる。

・接地の後半にはもはや蹴らない。地面についてからキックするイメージではちょっと遅すぎて,それでは一流選手のキック動作とは大きくかけ離れた動きになってしまう。

~ここからは一大学院生の勝手な解釈、好き勝手言います~
脚を棒のように動かすという指導がたぶん流行っていると思うが,そうすればたしかにコンパクトな動きができるが,それは加速力を生み出す主な要因ではないと思われる。

一流選手は,接地期の前半までにすでにものすごい加速力を生み出しているので,接地期の後半に余計にキックする必要が無い。キネマティクス的特徴でいえば,脚速度とほぼ同じ速度で股関節が動いている。

でも、接地中にキックしようとしている選手は,接地期前半の段階で加速力を生み出せず(特に股関節の伸展速度が不十分),接地期後半に膝の伸展や、足関節の底屈、股間節の更なる伸展を行ってそこで加速しようとしている。要するにキックの質が違う。

接地期後半に膝の屈曲や底屈の大きい選手は脚が流れ気味の動きになり、リカバリーがどんどん遅れてくる。

一流選手はカールルイスをはじめとしてよく腿が上がっている(それ故に腿を高く上げるという指導はなかなかなくならない)が、それは脚が流れないから,高い位置まで腿が戻ってくるのだ。

岩本敏江選手が腿上げをやめたら腿が上がるようになったというのは有名な話だが,膝屈伸型のキック動作をやめた結果,脚が流れないようになったことが大きく影響したと考えられる。

脚が流れているのに腿を高く上げようとしたら,滞空時間は限られているので接地準備(いわゆる振り戻し)ができる時間は不十分なものになってしまう。それだったら,腿が上がらないなりにしっかり接地準備を行った方がよいと考えられる。

同じ理由で膝先振り出すという動作も余計だ。伊東浩司選手がブレイクしていた頃にやたらと膝下を振り出す選手を多く見かけたが,明らかに間違っていた。伊東選手の場合膝下はムチがビュンとしなるような動きをしていたのに対し,身近なニセ伊東浩司は大腿四頭筋を使って文字通り振出していた。

相反神経支配で四頭筋が緊張すれば,大腿後面の筋肉は緩むので,その後大腿後面を使って行われる脚の振り戻し動作が遅れることは言うまでもない。

それから,接地期前半の段階で加速力を生み出せない選手がただ脚を棒のようにして動かしてもリカバリーは速くなるけれど(それと,過度の膝の屈曲や足関節の背屈が抑えられてエネルギーのロスは少なくなるかもしれない)そもそもの加速力は増さない。(ちなみに最近では,膝を伸ばさないどころか、曲がりながらキックする動作が良いとさえ言われていたりする。)

大事になってくるのは、積極的な接地動作だ。接地するまでに脚が速度を持っていることである。接地してグリップ感があったと思った瞬間にはひきつけ動作を始めるつもりでいい。ドロップジャンプの接地時間が短い、かつ高く跳ぶ時の感覚だ。

積極的な接地は,かの有名なトム・テレツ氏のプッシュ動作の指導でもある。真下に地面を押すということは、接地に先駆けて地面に向かって脚を素早く動かすことだ。結果として接地時には脚が高い速度を得ている。

接地準備を素早く行うことに付随して,回復脚の腿の引き上げも素早く行う必要がある。いわゆるはさみ込み動作だ。

接地した時の逆脚の膝の位置がどこにあるか、これは重要な要因であるように思われる。このポジションが過度に身体の後方にある場合,接地準備を開始する時に十分腿が引き上げられておらず振り戻し動作が中途半端になる可能性が高い。

かなり速い選手の中にもこのポジションの悪い選手がいるが、その選手は腿の引き上げの速さでポジションの悪さをカバーしている。

でも,その選手の多くはケガの危険と隣り合わせである。ギリギリのタイミングで接地を始めることになるので,なにかのきっかけでバランスが崩れると接地が身体の前になりやすく肉離れを起こしやすいのではないかと考えられる。

具体的な名前を挙げるとすれば,インカレチャンプの新井智之、佐分利慎也,国体チャンプの江里口選手などだ。彼らの走りは接地時の逆足の位置が常識的な位置よりも後ろにある。全員が10秒3台で走る優れたスプリンターだ。しかしながら、3人とも大きなケガを経験していることも忘れてはならない。

グダグダ書いたけど、なにかヒントになるようなことはあったかな。あんまり無いかな…

その道の方が見てくださっていたら何か意見をもらえるとありがたいです。
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by taji-kistan | 2006-12-22 01:45 | かけっこ【2007更新停止】
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