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スピードと力の関係

ザチオルスキー著「スポーツマンと体力」(1972)
II・4スピード養成に関連した筋力,技術トレーニングより

外部抵抗が小さくなると速度が上がって発揮される力が弱くなり、外部抵抗が大きくなれば速度が遅くなり発揮される力は大きくなるという有名な双曲線と共に、ホーホムート(1962)が行った実験の結果が紹介されている。

ここで重要なのは、速度が最小になる最大筋力を鍛えても最大速度は変わらず、
逆に、発揮筋力が最小になる最大速度を鍛えても最大筋力は変化しないということだ。

その例として、投擲物の重い砲丸投げの投擲距離は筋力に比例するが投擲物が軽いヤリ投げ(砲丸は約7.25kgVSヤリは約800g)では最大筋力と競技記録との間に顕著な関係がみられないと述べている。

また、筋力は上がりやすいがスピードを上げるのが難しいということを、ウェイトリフティングと100m走の世界記録の30年間での伸び率(WL20~30%VS100m2%)を挙げて説明している。

ではスピードを上げるためにどうしたらいいかというと、正規の条件での運動パターンを狂わせない程度の重さで最大の速度で運動を行うこと(=動的筋力トレーニング)である。

例えば、ヤリよりは少し重い砲丸をヤリ投げと同じ要領で投げることなどである。

同様に水泳では、陸上でうつ伏せになりチューブの抵抗をかけて水中のストローク運動に似た運動を行ったところ、筋力の増加と水泳速度との間に相関がみられたという。

このような運動は技術の感性と体力が養成されるため、ジヤチコフが「同時促進法」と名づけている。

(引用ここまで)

短距離走でいうならば、負荷のないエアバイクをどんなにフル回転させても、逆にめちゃくちゃ重いソリを一生懸命ひっぱっても実際の走りの速さには結びつかないってところか。

タイヤ引きでは、ちょうど重さが自分に合ってた人は記録が伸びるけど、重すぎたり軽すぎたりするとあんまり効果がない。うちの高校でもタイヤ引きリレーなんてやってたけど、せいぜい男女で重さを変えてたくらいで、最適な負荷が選択されていたとは言えないな・・・

ウェイトトレーニングでちょっと軽い重さでできるだけ速く動かすトレーニングをするのは、まさに今回紹介したことを実践していることになる。

筋力を上げて、次に速度を上げたらいいのではないかと思いがちで、実際に冬期トレーニング等でそういうトレーニング方法を行っている人も多いが、盲点がある。

せっかく筋力をアップさせてもその間に速度は落ちつづけ、落ちた速度を元の水準まで戻してさらに引き上げているうちに今度は筋力が落ち、結果的にどちらともあまり変わっていないという事態に陥る可能性があるということだ。筋力トレーニングの効果がなくなる前に速度の養成をしなければ意味がなくなってしまう。

あるいは、あんまりこの言葉使っているのを聞いたこと無いけど「同時促進法」を用いて、筋力・速度ともに養成していく方法をとることになるわけやね。


しかしながら、旧ソ連の研究者たちはひたすらに実験を繰り返して、こういう結果になりました、ということを膨大な量積み上げてきた。

超回復というスポーツ選手になら有名な話もそうだし、今回の話でも、負荷なしでトレーニングした群と最大負荷でトレーニングした群と、運動が目的とする動作と変わらない負荷でトレーニングした群にわけ、実際にやってみたわけである。

そしてその恩恵を今あずかっているわけだ。

過去の実験の中には今だったら倫理面でひっかかってできないものもあるし、とても一流選手を使ってそんな実験させられねーって内容のものもある。

当時の勤勉なソ連の研究者に感謝である。
by taji-kistan | 2006-11-14 16:48 | かけっこ【2007更新停止】
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