そろそろ研究の道からドロップアウトするので、今後深くスプリントのことを考えなくなる前に,自分なりの経験をまとめてみようと思う。
「ピッチは幼児もオリンピック選手も変わらない。」 「疾走速度と相関があるのはストライドだ。」 「ピッチ能力は筋組成(遺伝的要因)に依存する」 「ピッチとストライドは反比例の関係にある」 スプリントではよく使われる常套句だ。いわゆる一般論。 自分が知るかぎり,スプリントトレーニングの方向性はピッチを高めるか,ストライドを高めるかの二者択一で,上に挙げた常識から,ストライドを高くすることに重点を置くという結論が導き出されている文献をよく目にする。 例)「運動会でいちばんになる方法」 しかし,最近上に挙げたような常識は正しくないのではないかと思うようになってきた。 というのは, ①身長が大きければストライドが大きくピッチが遅いという反比例の関係は成り立っても、ストライドを伸ばしたらピッチが下がるという反比例の関係は成り立たないのではないか。 本当にピッチとストライドが反比例の関係にあるのなら,ストライドを伸ばすトレーニングをしたらピッチは下がるはずである。しかし,ピッチが変わらずにストライドが伸びているということはすなわち相対的にピッチは高くなっているということではないか。このことは斉藤ら(1995)がピッチとストライドの指数を用いて明らかにしている。 ②ストライドと速度の相関があるのは,個人間(違う人同士)の比較であって,実際にトレーニングして疾走速度が上昇した場合,ピッチが高くなっている場合が多い。むしろストライドが伸びたという研究はあまり見かけない。 ③ストライドは成長して身長が伸びれば勝手に伸びる。 ※ストライドの身長比でも一流選手は高い値を示すので,やはり一流選手のストライドは大きいのは間違いない。 ①を補足説明すると,スプリントの接地動作はSSC活動によって行われる極めて短時間の運動でおそらく接地時間を意図的に長くして力積を大きくすることは困難である。 つまり長距離走のように接地時間を長くして力積を大きくすることによってストライドを伸ばすことや接地時間を短くしてピッチを高くするというのは不可能だと思われる。 そうではなく,限られた接地時間により大きな力を発揮することによってストライドが獲得される。そのためには,接地直前の脚の速度が速い必要があるので,ストライドを大きくすることは結果としてピッチを速くすることにもつながるのではないか。 ごちゃごちゃと書いたが,自分がもしコーチングするとすれば,ピッチを速くすることでも,ストライドを伸ばすことでもなく,限られた時間により大きな力を地面に伝えることに重点を置くだろう。 そうすれば,ピッチもストライドも伸びるというのが自分の立場だ。
by taji-kistan
| 2006-12-27 19:45
| かけっこ【2007更新停止】
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